Macintosh PowerBook 170 Special Editionで日本メーカーの盛衰を知る(金子)

2012-03-25

こんにちは、金子です。今回はMacintosh PowerBook 170 Special Editionを紹介します。

1991年に発売されたMacintosh PowerBookシリーズは初のノート型Macです。それ以前にもMacintosh Portableというのもありましたが、あれはポータブルと呼ぶには重すぎ、当時Appleのハードウェア担当副社長であったジャン=ルイ・ガセーが退職する際、エバンジェリストのガイ・カワサキから退職祝いとして「ウォークマンだ」と言いながらラジカセをプレゼントされた皮肉でもおわかり頂けるかと。Apple退職後のガセーが興したBe社については1990年代中頃にAppleの未来を決定する重要ベンチャー企業となるのですがその話は今回は関係ないのでまた別の機会に。

PowerBookの初期シリーズは100, 140, 170の各モデルがあり、特徴としては、100はフロッピーディスクドライブ(FDD)を外付けにして軽量化を図り、170は当時高価であったTFT液晶を搭載していました。
100の製造はSONYが行っていたともっぱらの噂で、昔からMacのFDD、あの自動イジェクト機能の付いた凝った仕組みはコストが掛かるにも関わらず搭載していたというこだわりは、Macプロジェクトのリーダーが、あの皆さんお馴染みの大将であった事からも伺い知る事が出来ますし、そのFDDを製造していたのはSONYでした。当時、このFDDを搭載していた日本のPCは僕の知る限りでは存在しません。

本題の170でも、このSpecial Editionというのは、PGAツアーゴルフにAppleが協賛した記念に500台だけ作られた限定版で、ベネトンカラーとでも申しますか、白、青、赤、緑など原色のカラーリングが違う以外、ハードウェアのスペックは変わりません。

大変な珍品だったのですが、やはりコンピューターの宿命というか、「最新機種が最高傑作」である事には変わりませんのでこういうモノを作っても何ら企業の売り上げに貢献するものではありません。その後も20th Anniversary Macなどの限定版もありました。

ちょっとお話したいのは、当時のMacというかコンピューターに置ける日本製部品の多さです。まずバッテリーとFDDが恐らくSONY製、メモリーは東芝か日立でしょう。液晶パネルも、170のTFTはアイルランドで作られたようですが他のモデルの中には日本メーカーのものもあります。加えて初期のキーボードも一部は日本のアルプス電気製で中古市場では大変な人気でしたし、設計自体も100はSONYの設計?製造、その後の2400は日本IBMが設計・製造を担当しました。ここ10年でもPowerBook G4のチタン筐体やiPodの初期筐体、iMac G4のステンレス製の首は新潟の金属加工メーカーが請け負っていたといいます。

1990年代からAppleは、マレーシアなどにあった自社工場を閉鎖、ファブレス(工場なし)企業として、製品ごと、期間ごとに複数の協力会社に「入札」させていました。それでもパーツは日本製、アセンブリ(組立)は台湾の協力工場、というのが定番だったのですが、台湾メーカーが製造の軸足を、より人件費の安い中国に移して今に至ります。

2012年の今、日本メーカーのパーツは一体どれだけあるでしょうか?新しいiPadのメモリーはかろうじてエルピーダ製(の、ものもある)でしたが、Retinaディスプレイに関してはSHARPの液晶パネルはAppleの品質基準に適うものではなくSamsungに取られたという噂ですし、AppleとSamsungの、知的所有権に関する争いがなければ、これはもうほとんどのパーツをSamsungに作らせていたのではないでしょうか。

日本メーカーの得意分野であった小型実装の技術は、全てのパーツがもはや「汎用品」になった今や競争力を失い、人件費の安い韓国、さらに安い中国へと流れて行くのは、これは日本が「豊富な安い労働力」を背景に、半世紀ほど前に欧米のメーカーから仕事を奪った事と全く同じ仕組みですので仕方がない事としても、Appleのように、ただ安ければ良い、という訳ではなく品質が良ければそれなりの金額を払う用意があるメーカーからもそっぽを向かれているのは一大事です。

昔のPCなんて、動いていてもただのガラクタですが、こういった次第で「歴史認識」を新たにする重要な部品でもあります。

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