Power Mac 8100/80でAIM連合を考える(金子)

2012-04-06

こんにちは、金子です。前回より時代が前になってしまいますが、Power Mac 8100/80の話を書こうと思います。
1994年に発売した”Power Macintosh”シリーズは、それまで初代Macから使い続けてきたモトローラ社製MC68000(以下68Kと略)系のCPUを捨て、全く互換性のないIBM社製PowerPC 601をCPUにした初めてのMacです。
CPUが違うと何が違うのよ!?という方に説明させてもらうと、従来の68K用に書かれたアプリケーションは全て動かなくなります。動いても、それは「エミュレーション」という技術によって、アプリケーション動作中、68Kの言葉をリアルタイムにPowerPCの言葉へと「同時通訳」をしているようなもので、これが速度的に速いわけがありません。従来の言葉を「PowerPCの言葉」で書き直すには時間が掛かり、Power Macユーザーが本来のハードウェアの速度を体感するのは、実は数年経ってから、という有り様でした。なにせ当時、Mac OS自体も68Kのコードが大部分残っており、大枚叩いてPower Macを買った皆さんは、まあ時代の人柱という所でした。

PowerPC自体は、1990年代初頭にApple, IBM, Motorola(略してAIM)の3社が共同で開発し、製造はIBMとMotorolaの2社が請け負っていました。これも専門的な話というか僕もハードウェア業界の人間ではないので触りしか分かりませんけどCPUには大別してCISC型とRISC型があり、68KやIntel x86 CPUは前者、PowerPCには後者にあたります。そして当時、CISC型にはもう高速化の伸びしろがあまり残されていない、といった風潮があり、今後更なる処理速度の高速化を目指すにはRISCしかない、つまりIntelにあまり未来はない、というのが、純真だったApple支持派の言い分であったのです。
ところがどうでしょうか。Intelは金に物を言わせ、CISCだろうがRISCだろうが全くお構いなしにCPUを高速化させてきました。「CISC型にはもう未来が無い」のは単に理屈の上ではそうかもしれないけれど、ハードウェアの高性能化にとって一番必要なのは設計ではなく設備投資つまりはカネである、という現実を突きつけられたのです。

しかしPowerPCが全く優れていないわけではありませんでした。最近でこそiPhoneなどはイギリスARM社のCPUが使われていますが、少し前までは汎用PCではない組み込み機器はPowerPCの独壇場であり、ゲーム専用機をとってみても任天堂Wii、ソニーPlayStation3、マイクロソフトXbox360はいずれもPowerPCを搭載しています。

1994年から2005年まで続いたMacの「PowerPC時代」の次に来たのは何とIntelでした。2006年発売のMacには、IntelのCPUが搭載されていたのです。これには救世主の来迎を待ち望むApple信者達は面食らいましたが、そもそも「救世主」ジョブズは全くPowerPCに思い入れはありませんでした。なぜならMacがPowerPCを搭載するに至った1990年代前半、彼はAppleには在籍していなかったからです。更に言えば1976年に開発されたApple I、これはウォズニアックが独力で設計したコンピューターですが、それにIntel製のRAM(※1)を使おうと言ってきたのはジョブズでした。となればこれは自然な流れです。

そして古いアプリケーションに関する処理速度の問題ですが、今度は68K->PowerPCの時のような「同時通訳」ではなく、アプリケーションの初回起動時に全て通訳したファイルを別途保存し、2回目の起動からは通訳済みのアプリケーションを走らせる「Rosetta」という仕組みを用意しました。これは同時通訳よりも高速に動作する、優れた方法です。

というわけで1984年から現在までMacはMacですが、CPUの2度に渡る変更、OSの大改定を経て、当時とは名前だけが同じという、全くの別物になっているのです。

MicrosoftもWindows 8からは、長年住み慣れたIntelの土地を離れ、ARM版も出すというのですけど、これは失敗するのではないかと僕は思います。というのも、ユーザーも開発者もIntelに慣れすぎ、全く新しい環境に適用しようという考えにはなりにくいでしょうし、またIntelに決め打ちで書かれたコードが、そのままで動くとも思えません(IntelがリトルエンディアンだからCPUの生成する通りにデータをTCPに流しているようなコードはARMで動くのでしょうか?)。更には「動くアプリケーションが少ない」となれば、ソフトウェアの豊富さを理由にWindowsを使っているような層には全く魅力が無さそうですけど、どうなることやら。
最後に誰も知らないネタをひとつ。初代Macの筐体に開発チームのサインが浮き彫りになっているのは有名ですが、Power Mac 8100/80にもありました。今ならエンジニアの引き抜きを恐れてこういう「遊び」は絶対に禁止ですが、大らかだった時代の最後の香りがします。自分で分解した時に気付いて驚きました。

(※1)RAMかどうか失念しました。

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